融資成功に役立つ銀行との交渉術から書類作成、日常活動など全戦略

中小企業の経営者にとって、資金繰りはとても重要な経営課題です。健全な資金繰り、経営環境を維持するために欠かせないのが、銀行など金融機関との付き合いです。銀行との付き合いが重要である理由は言うまでもなく、必要な時に融資を引き出せるかどうかに関わってくるからです。

しかし、銀行との付き合いが重要であるからと言って、ただ闇雲に密接な関係を持てば良いというわけではありません。重要なのは自分の会社にとっていかにメリットのある取引ができるかであり、そこで重要になるのが交渉力です。

この記事では、銀行との付き合いにおいて成否を決めると言っても過言ではない交渉術について、その重要性から交渉力を高める方法を解説します。

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中小企業向け新型コロナ対策の支援制度や補助金など資金繰り対策まとめ

1.銀行との交渉を有利にするための戦略4つ

銀行との有利な交渉を実現するために、最初の段階で取るべき4つの戦略について解説します。

1-1.日常的に密接な付き合いをしておく

個人向けに提供されているキャッシングやカードローンと違って、事業者が銀行から融資を受けるというのは、本質的に全くの別物です。個人のキャッシングであれば融資を利用したい時にだけ申し込みをしても審査の対象になりますし、収入や過去の利用歴などにおいて問題がなければ機械的に審査に合格することができますが、事業者が利用する融資はそうはいきません。

そこで重要になるのが、日常的な銀行との付き合いです。銀行の担当者と定期的に顔を合わせる機会があれば、その担当者は書類上にある情報だけでなく、訪問時や経営者と会った際に得られるさまざまな情報も審査に口添えをすることができます。融資が必要な時だけ申し込みをしてくる事業者と、普段から密接な付き合いがある事業者であれば、どちらが審査に有利になるかは言うまでもないと思います。

1-2.敢えて他行も利用して交渉材料にする

それぞれの企業にはメインバンクといって、最も取引関係が密接な銀行があります。メインバンクは最も取引関係が密接なのであって、唯一無二の存在ではありません。世の中には無数に金融機関があるのですから、交渉を有利にするために敢えて他の銀行を利用してみたり、利用を示唆するなどの駆け引きは有効です。

1-3.必要がない時でも融資を利用して実績を作る

銀行が融資の審査において重視するのは、返済能力と実績です。実績とはつまり、過去に融資を利用してそれを返済した実績のことです。全く融資を利用したことがない事業者からの融資申し込みよりも、過去に融資を利用して完済した実績を持っている事業者のほうが審査には有利になるので、交渉力をつけるために必要がなくても融資を利用するという戦略があります。

もちろん必要もないのに融資を利用すると金利の分だけ損をすることになりますが、事業者向けの融資では金利もそれほど高くありませんし、これをしておくことによって交渉力がつき、低い金利で融資を利用することができるようになれば、実績作りのコストは資金調達コストの低減という形で充分取り返すことができます。

1-4.銀行への情報提供は出し惜しみをしない

銀行との交渉を有利にしたいがために、審査に不利になりそうなことは隠したいのが人情です。しかし、銀行は融資のプロでありお金のプロです。事業者が都合の悪いことを隠したところで他のさまざまな「状況証拠」によって知られることが大半なので、下手に隠し事をするのは推奨しません。

むしろ、都合の良いことも悪いこともすべて出し惜しみすることなく情報を提供するほうが誠意が伝わりやすくなり、銀行との信頼関係も醸成しやすくなります。銀行融資は信頼関係に基づく取引なので、交渉力アップのためにも情報提供の出し惜しみは避けるべきです。

1-5.交渉のタイミングを見極める

銀行との交渉には、事業者側に有利になるタイミングがあります。最も良いタイミングは、銀行の中間決算と決算の1ヶ月程度前の時期です。なぜなら、中間決算や決算の時点で融資実績が確定するため、その直前は融資実績を伸ばしておきたい心理が働きやすい銀行側の事情があるからです。

逆に事業者側の事情として交渉の良いタイミングだと言えるのは、預金額が大きくなる時です。大口顧客の入金が重なる時期など、一時的なものであっても預金額が大きくなる時は銀行側との交渉も有利に働きます。

2.銀行との交渉術を高める「書類」の考え方

銀行との交渉を有利にする戦略として、ここでは「書類」についての考え方を解説したいと思います。銀行との交渉において決算書や事業計画書は武器のようなものなので、書類についてもしっかり武装して交渉力を高めましょう。

2-1.銀行は決算書のここを見ている

決算書は企業にとっては成績表のようなものです。銀行は当然、この重要な成績表である決算書を審査の対象としています。銀行が決算書の中で重視しているのは、経常利益と純資産、そして借入残高です。いずれもその企業に融資をした後でしっかりと返済能力があるかどうかを知るための指標なので、これらの数値を重視しているのはセオリーであるとお考えください。

2-2.事業計画の実現性、具体性

融資の申し込み時に、事業者は銀行に対して事業計画書を提出します。借り入れたお金を使って何をしようとしているのか、その事業でどのように利益を上げていこうと考えているのかといった戦略を伝えるための、こちらも重要な書類です。

事業計画は文字通り計画なので、未来の話です。未来の話だけに銀行はその内容の実現性や具体性を重視しています。もちろん数値には具体的な裏付けや根拠が必要ですし、計画の内容には現実的な実現性がなければ説得力はありません。

銀行が実現性や具体性を重視しているのは、もうひとつ理由があります。それは事業者の計画に対する本気度です。どれだけ本気で取り組もうと思っているかを知る最大の手段が事業計画書なので、計画の内容が実現性に富んでいて今すぐにでも実行できそうであること、そして利益を上げることができるイメージが具体的に描きやすいほど、交渉力を高める事業計画書となります。

2-3.エビデンスの提示

決算書は現在を示す書類であり、事業計画書は未来を語る書類です。融資の審査ではそれに加えて実績という「過去」も重要になるので、過去に融資を受けた場合にそれを原資にどのような事業を展開し、どのように利益を上げ、そして返済したのかというエビデンスを示すことはとても重要です。

どんな事業でも最初は赤字スタートとなりますが、それをどうやって黒字転換したのかをデータを交えながら説明することができれば、より説得力は高くなります。銀行はこうしたエビデンスに裏付けられた情報を重視し、好む傾向があるので、これも交渉力アップに効果的です。

3.交渉力アップのために日常的にやっておきたいこと

最後に、銀行との交渉力をアップし、そして維持するために日常から意識してやっておきたいことを3つ解説します。こうしたことを意識して取り組んでおくことにより、いざ銀行に融資を申し込む時の交渉力は俄然違ったものとなるでしょう。

3-1.顔の見える取引をする

キャッシングなど個人向けの融資は、ネットだけで完結できるサービスもあるように、極力顔の見えない取引をできることが売りになっています。しかし、事業者が利用する銀行融資は全く逆で、日常から顔の見える取引環境を維持することが交渉力を大きく左右します。

銀行の得意先係(いわゆる営業マンです)が定期的に訪問してくるケースは多いと思いますが、それだけではなく経営者自らが銀行に出向いて融資係など内勤が多い人たちと関係性を持っておくことが有効です。なぜなら、得意先係は外回りをするため顔を合わせることが多い一方で、融資係など内勤がメインの人たちはこちらから訪問しないと顔を合わせる機会があまりないからです。

こうした心がけによって融資係と顔の見える取引関係を持てば、いざ融資を申し込んだ時に「あの社長の会社か」となりやすく、できるだけ審査に通るようにしてあげたいというバイアスがかかる可能性もあります。

3-2.銀行側の事情、思惑に精通しておく

先ほど、融資を申し込むタイミングにも戦略があると述べました。これは中間決算や決算を意識したタイミング戦略ですが、これ以外にも銀行員が持っているノルマなど、銀行側の事情や思惑に精通しておくことで交渉力を高めることができます。

こうした銀行側の事情を知るには、当事者である銀行員とコミュニケーションを持つことが最も確実です。日常から世間話程度の会話だけでなく、時には一緒に食事をするなどの関係性を構築するのも良いでしょう

3-3.銀行員と話したことを詳細に記録する

何気ない世間話から事業の今後や融資に関する話など、銀行員と話したことはすべてメモをして記録しておきましょう。その場の思い付きだけで会話をしてしまうと、以前に言ったことと異なることを言ってしまったり、相手によって異なることを言ってしまう可能性があるため、先方を混乱させてしまう恐れがあります。

また、銀行員が何気なく話していることには、融資成功のヒントが隠れているかもしれません。その時は気づかなくても、後になって気づくことがあるかもしれないので、銀行員との会話は大切な情報収集の機会でもあると考えましょう。

4.まとめ

必要な時に融資をしっかり受けることができるよう、銀行との交渉力を高めておきたいとお考えの経営者は多いと思います。そのための考え方や戦略、日常活動について実践的な解説をしてきました。どれも今日から始められるものばかりなので、まずはできることから始めてみて、来たるべき銀行との交渉に備えましょう。

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