「財務の勉強はどのように始めたらいいのだろうか?」
「経営に活かすことのできる財務の勉強のコツについて知りたい」
これから経営をしていこうとする上で財務の勉強は欠かせません。財務の知識を得ることで現在の会社の状況を知ることができ、将来にわたって会社を安定させることができるためです。
しかし「財務」と言ってもその範囲は広く、どこから勉強を開始して良いかわかりにくいでしょう。
今回の記事では、こうした疑問点を解消するために財務の勉強について解説させて頂きます。
財務の勉強を始めるためには、そもそも財務とはどのような範囲の知識を示すかを理解し、その上で①財務諸表を読む勉強、②資金繰りのための勉強に分けて着手するのがおすすめです。
数字を相手にした勉強なので実体を掴みにくいところもありますが、この記事が一つのヒントになると嬉しいです。
Contents
前提として「財務」はどのような範囲の知識なのか
財務の勉強を始めるために、まずは「財務」とはどういった範囲の知識であるかを解説させて頂きます。
財務、会計、ファイナンス、アカウンティング、経理の違い
財務と近しい性質を持つ言葉に「会計」「経理」「ファイナンス」がありますが、それぞれの意味を確認していきましょう。
はじめに大きな括りとして、財務と会計があります。それぞれ英語で「財務=ファイナンス」「会計=アカウンティング」となります。
つまりファイナンスは財務のことなのですね。財務と会計を区別するためには「財務が扱うものが現金」で、「会計が扱うものが利益」と覚えておくと理解しやすいです。
その上で、会計の業務の一部として「経理」が存在します。経理業務は会社の支出の流れの管理、記帳、伝票の作成などであり、これらは会計業務のために存在しているのです。
これで「財務」「ファイナンス」「会計」「アカウンティング」「経理」の関係性がご理解頂けたのではないでしょうか。
財務の柱となる2つの分野
他の用語との違いがわかったところで、続いて財務の具体的な内容を紹介させて頂きます。財務には大きく分けて以下の2つの分野があるのです。
- 財務諸表を読む力
- 資金繰りをする力
財務とは将来にわたる会社の現金を扱う業務なので、財務諸表から未来の資金繰りについて計画を立てていくことが求められます。そのため、この記事でも上記の2つの勉強について解説させて頂きます。
財務その1:財務諸表を読むための勉強
それでは早速、財務の勉強の中身に入っていきましょう。ここでは①財務諸表を読む力について、財務諸表の例もまじえて解説させて頂きます。
3つの財務諸表
すでにご存じとは思いますが、財務諸表には以下の3つがあります。
- 貸借対照表
- 損益計算書
- キャッシュフロー計算書
以下では3つの財務諸表を実際に確認してみましょう。
貸借対照表
貸借対照表は、ある時点における会社の財政状態を示すものです。つまり「いくらの現金・売掛金があって、将来支払わなければならない借入金はいくらあって…」という情報が詰まっているのですね。
以下の貸借対照表の例をご覧いただけますでしょうか。
貸借対照表は「左側にプラスの資産、右側にマイナスの負債」が載っていると考えてください。
上記の例では、「資産の部合計」が「負債の部合計」よりも大きくなるので、「純資産の部合計」がプラスとなっています。一方で、純資産の部合計がマイナスになると債務超過の状態となります。
貸借対照表を読む上で気を付けなければならないのは、帳簿上はプラスとして評価されている資産の市場価格は実際にどの程度あるかという点です。
上記の貸借対照表には「ソフトウェア」として90万円が計上されていますが、これが市場で全く売れない製品である場合、90万円を0円にしたものが会社の正しい状態となります。
同様に30年前の購入当時の価格で計上していた不動産が、現在価格では10倍に価値を有するケースもあります。
このように貸借対照表については資産の額が現在の市場価格に沿っているか否かを確認していかなければなりません。それによって債務超過の状態になる恐れもあるのです。
損益計算書
続いて損益計算書について簡単に説明させて頂きます。損益計算書とは一定期間における会社の事業結果を示すものです。以下の例を確認してみてください。
上記の通り、はじめに期間中の売上高があり、そこから各種の経費を差し引き、主たる事業以外の収支も計算し、最終的に法人税などを支払った後の当期純利益が残ります。
つまり一定期間中、会社が黒字だったのか赤字だったのかを示すのですね。
こうした損益計算書は経費削減のための重要な指針となります。上記のように「販売費及び一般管理費」として、各種の経費が一覧になっているため、どこにお金をかけすぎているかがわかるのです。
中小企業の場合、接待交通費や地代家賃が会社の規模に合っていないケースが多くあります。
そうした場合、一部のクライアントとのやりとりにオンライン会議システムを使ったり、オフィス移転をしたりするなどの対策が浮かびます。このように損益計算書はあなたの会社の事業の内訳を知るために使えるのです。
キャッシュフロー計算書
キャッシュフロー計算書は、名前にもあるように「現金および現金同等物=キャッシュ」の動きを示します。つまり財務の分野と密接に関係するものなのですね。
貸借対照表では資産と負債のバランスを、損益計算書では売上と経費のバランスを知ることができましたが、その2つからは読み取れないのがキャッシュの流れです。
例えば3年後に10億円が入る商談をまとめたとしても、それまでのキャッシュが10万円しかなければ会社は黒字倒産する恐れがあります。
このように各種の支払いに必要なキャッシュの流れを把握しておくことは非常に重要なのです。
財務諸表を読むためにおすすめの書籍3選
ここまで3つの財務諸表について簡単に説明させて頂きましたが、財務省表の読み方には奥深いものがあります。そのため以下の書籍を利用して勉強を進めることで、財務の知識をより深く得ることができるはずです。
あなたの会社の財務諸表と照らし合わせながら是非とも確認してみてください。
いずれも財務諸表について全体を知るための役に立ちます。初心者向けの内容も含まれますが、知識の確認に有益でしょう。
財務その2:資金繰りの勉強
続いて②資金繰りをする力について解説させて頂きます。
資金繰りとは
会社を倒産させないためには資金繰り、つまりは収支を管理することが求められます。「定期預金」「売掛金」「不動産」などはすぐに現金化できるとは限らないため、資金ではなく資産として理解されます。
そのため資金繰りでは「現金」「普通預金」といった自由に現金化できて支払いに使えるものを管理していくことになります。
以下は資金繰りを良くするための6つのポイントです。いずれも目下の資金を増やすことにつながります。
- 売掛金の資金回収を早める
- 買掛金の支払いを遅くしてもらう
- 過剰在庫を処分する、仕入れを減らす
- 人件費を削減する、残業代の見直し
- 借入金の返済条件の見直し
- 金融機関から借入れする
このように目下の資金を増やすアプローチには複数のものが存在します。取引先や金融機関と交渉して実現するものもあるため、日頃からステークホルダーと良好な関係を構築しておくのも万が一の場合への備えになりますね。
資金の調達先を確認
中小企業は資金的な体力に劣るケースが多いため、以下では資金の調達先を紹介させて頂きます。親族や友人といったプライベートな間柄の人物から金融機関までを調達先として整理しておくと良いでしょう。
- 親や親戚、友人や知人
- 日本政策金融公庫
- メガバンク(大手銀行)
- 地方銀行
- 信用組合・信用金庫
- 助成金・補助金
- ベンチャーキャピタル
- 個人投資家
- ノンバンク(消費者金融・信販会社)
このように調達先は様々ですが、まずは資金を借りずに社内で支払いを可能にすることが重要です。借りれば借りるほど利息が膨らみ、将来における資金繰りを悪化させる恐れがあるためですね。
資金繰りを学べる書籍3選
以下の3つは資金繰りについて学ぶことのできる書籍です。資金繰りについては、会社の状態が悪化してから考えるのではなく、日頃からシミュレーションしておくことが求められます。
資金繰りのあり方は会社によって様々です。例えば支出に備えるために多額の現金・預貯金を確保しておく経営があります。それだけ経営は安定しますが、事業拡大のための投資が鈍るのも事実です。
こうしたポイントのバランス感覚はすぐに身に着くものではないため、書籍を読みながらシミュレーションを繰り返しておく必要があります。
財務の勉強を進めるコツ
ここまでの内容で財務における2つの分野について解説させて頂きました。財務諸表を読み、そこから資金繰りについて考えるのが財務の主な業務となります。
会社が事業で資金を稼ぎ、そこから必要な支払いを行うものである以上、財務は事業活動の根幹をなす業務です。
しかし、このように知識だけを得ても財務の具体的なイメージはできないものです。それは財務諸表に表れる数字に現実感がないためです。
つまり「棚卸資産として130万円がある」と貸借対照表から読み取ることができても、「それが具体的にどういった品なのか、個数はいくつなのか、最悪の場合にどういった手法でいくらの現金にすることができるのか」がイメージできていないのですね。私もそうでした。
知識をつけて財務諸表の項目や数字が示す意味を理解できても、それを自分の会社の状態に置き換えることができていなかったのです。そこで私は以下の3つのポイントを意識しながら、財務諸表の数字を会社の現実に置き換えていきました。
- いつの時点で在庫として何がいくつあるのか
- 毎月何にいくらの支払いをしているのか
- 毎月の支払いタイミングと毎月の売掛金回収のタイミングのずれ
これを繰り返すことで財務諸表の数字を見ただけで会社の状態を具体的にイメージできるようになったのです。
問題点の発見と解決方法の模索がスムーズに進むようになるので、手間ではあると思いますがあなたも一度は財務諸表と照らし合わせながら会社をひっくり返してみてください。
財務のために必須の経理の知識
記事の最後では、財務を理解する上で必要な経理の知識について簡単に紹介させて頂きます。
記事の始めで経理は会計の一部であると述べましたが、財務と会計は財務諸表を通して繋がっています。そのため財務への理解を深めるには経理の知識が必要なのです。
経理の業務は、会社の事業活動を数字に置き換えて財務諸表を作成するものです。そうして作られた財務諸表を読み、資金繰りについての戦略を練るのが財務となります。
財務諸表を作成する経理業務については以下の2つの形で学ぶのがおすすめです。
- 書籍を用いた座学
- 資格取得
経理に関係する資格は豊富にあるので、書籍で勉強を進めつつ余裕があるならば資格取得を一つのゴールをしてみましょう。こうすることで経理について体系的に理解することができます。
経理を学ぶためには日商簿記がおすすめ
経理について体系的に学ぶ際に最もおすすめの資格はやはり日商簿記です。簿記こそまさに経理の王道資格ですね。
日商簿記は4級から1級まであるので、あなたの現在の知識に応じて勉強を開始する地点を選びやすいのも嬉しいでしょう。経理の実務に使えるのは2級以上であり、1級まで取得すると知識を経営に大きく活かすことができます。
以下は日商簿記の勉強に役立つ書籍です。
あなたの進度に合わせて参考書を選んでみてください。
まとめ
今回は財務の勉強について解説させて頂きました。この記事が財務という漠然とした業務を正確に把握する一助になると幸いです。
財務とは結局のところ財務諸表を読み、そこから会社の将来の資金繰りについて考えていくことです。つまり会社を倒産させずに持続させるために活動となります。
今回の記事で紹介させて頂いた以下のポイントを意識しながら、あなたもあなたの会社の財務について考えを巡らせてみてください。
- 財務とは①財務諸表を読む力、②資金繰りを考える力
- 財務諸表には貸借対照表、損益計算書、キャッシュフロー計算書がある
- 資金とはすぐに支払いに使える現金化しやすいもの。現金化の時間のかかる資産と区別しよう
- 支払いと収入のタイミングを把握して、会社を持続させよう
- 財務の理解を深めるためには、経理の知識も必要。日商簿記にチャレンジしてみよう
会社の事業活動の大部分は数字で把握することができます。数字で把握するからこそ、経営をスムーズに進めることができるのですね。
財務の知識は一夜にして身に着くものではありませんが、自らの会社の状態と数字の照らし合わせを繰り返すことで、少しずつ身に着いていきます。あなたも、これを機に財務の勉強に着手してみてください。
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