「2代目社長は大変だ…他の人も苦労しているのかな?」
「2代目社長として会社を盛り上げていきたいけれど、どういった点に注意して経営すべきなのだろう?」
創業者から会社を譲り受け、2代目社長となったときのプレッシャーには凄まじいものがあるはずです。こればかりは経験してみないことには想像できないものですよね。
私も父の会社の後継者になった時は「これからは私が従業員方の生活を支えていかなければならないのだ…」と、胸を締めつけられるようなプレッシャーを感じました。
それはこの記事を読んでくださっている皆様も同じなのではないでしょうか?
そうした大きなプレッシャーに打ち勝ち、会社を盛り上げていくために、この記事では私が事業承継を経て学んだ2代目社長として注意すべきポイントを紹介させて頂きたいと思います。
この記事を読んで頂ければ、あなたの抱える大きなプレッシャーを原動力にして会社の経営を成功させるコツが見えてくるはずです。
Contents
2代目社長の苦労
はじめに2代目社長の苦労について解説させて頂きます。ここでは「自分以外の2代目社長もこんな風に苦労しているのか…」と知って頂けると嬉しいです。
根拠のない反発心を抱かれる恐れがある
1つ目の苦労として紹介させて頂くのは、周囲から根拠のない反発心を抱かれる恐れについてです。これは父や親族から会社を引き継ぐ際に避けて通ることのできない問題になります。
例えば、あなたが両親の作った会社を引き継ぐと、ほぼ必ず「あいつは子供というだけで2代目社長になった」という陰口をたたかれてしまうのです。
これはあなたの経営者としての実力に関係なく起こる恐れがあります。
その結果、以下のようなデメリットを発生させてしまうのですね。
- 会社組織がバラバラになり、足並みがそろわなくなる恐れ
- あなたの小さなミスが大きく非難される恐れ
- 社員があなたの指示を聞かなくなる恐れ
もしかしたら、あなたも経験があるのではないでしょうか?
この問題の厄介な点は、反発心に根拠がないところです。根拠がないため、改善のしようがないのですね。
そのため、あなたは新しい経営者として一つずつ信頼を積み重ねていかなければならなくなります。
こうした周囲からの根拠のない反発は2代目社長の多くが経験するものではないでしょうか。
会社を潰せないというプレッシャーが大きい
続いての苦労は、冒頭文にも記載させて頂いた通り、2代目社長として大きなプレッシャーを感じるというものです。しかしプレッシャーを感じるのはある意味において当然のことでもありますよね。
なぜならば、親が守ってきた会社の存続、会社のために働いてくださる従業員の生活、そういったものが2代目社長であるあなたの肩にのしかかってくるためです。
こうしたプレッシャーがあると経営について弱気になってしまい、大胆な経営判断ができなくなる恐れがあります。
つまり、リスクや不安を避ける判断ばかりになってしまうのですね。これは会社にとってもマイナスになるでしょう。
こうした不安とプレッシャーがあるのは当然ですが、それにとらわれず、あなたはポジティブな動機を経営判断の基礎に置くように心がけると良いと思います。
つまり「会社をこう変えたい!」という気持ちから経営判断を行っていくのです。
私も経営に参加したばかりの頃は不安とリスクを避ける判断ばかりしており、体と心に大きな負担がかかっていました。
その後、ポジティブな動機に基づいて経営するようになり随分と気持ちが楽になったことを覚えています。
あなたも大きなプレッシャーを感じている場合は、それにとらわれずにポジティブな動機を判断基準に据えてみてください。きっと経営が楽になるはずです。
継いだ会社の経営状態が悪い
最後に紹介させて頂くのは、継いだ会社の経営状態が悪かった場合です。
父や親族から会社を継ぐ場合、経営状態が悪いことを事前に知った上で責任感や情から後継者となることを決めるケースがあります。
そして蓋を開けてみると会社の状態が思ったよりも悪く、それが大きな苦労になってしまうのですね。
ここで「そもそも経営状態の悪い会社を引き継がなければいい」と結論付けるのは妥当ではありません。事業承継には、数字だけでは割り切ることのできない理由があるものです。
こうして引き継いだ経営状態の悪い会社については、専門家のアドバイスを得ながら一つひとつ改善していくしかありません。
僭越ながら私も事業承継のコンサルタントをしておりますので、あなたの会社についてお手伝いをさせて頂くことのできる点もあるかもしれません。
引き継いだものは仕方ないと腹をくくり、一つずつ問題を解決していきましょう。
2代目社長として会社を成功させるポイント
2代目社長の苦労について紹介させて頂きましたが、あなたと共通するものはあったでしょうか? 2代目社長には、自ら会社を立ち上げるものとは別の苦労があるのですね。
続いては2代目社長として会社を成功させるポイントを紹介します。2代目社長であることの大きな特徴は、事業承継に至るまでは創業者が経営を行っていた事実がある点です。
つまり経営者の先輩が社内にいるのですね。そのため、いかにして創業者から2代目社長へと経営の主導権を移していくかが重要になるのです。
会社にとってポジティブな結果を出して社員からの信頼を得る
経営の主導権を2代目社長に移していくためには、第1に社員からの信頼を得ることが重要となります。
仮に社員からの信頼を得られないまま全面的な経営に着手すると、社員があなたの指示を聞かないというリスクが生まれるのですね。
では、どのようにして社員からの信頼を得ていけば良いのでしょうか。この点については、目に見える成果を出す以外に効果的な方法はないと考えます。
私の場合も、はじめは社員と同じ製造業務で汗を流すことで信頼を得ようと考えていました。しかし、それでは人件費が一人分増えるだけなのでむしろ会社の利益を圧迫するだけだろうと危機感を覚えたのです。
そのため前職の営業経験を活かして、会社の売上を高めることで社員からの信頼を得る方向に舵を切りました。その結果、5年間で売上を2倍近くに伸ばすことができました。
このように社員からの信頼を得るためには、2代目社長の得意分野で目に見える成果を出すことが重要です。
2代目社長の決断と責任で経営する
続いて紹介させて頂くポイントは、2代目社長の決断と責任で経営していくというものです。事業承継をした会社に多いのが、大部分の経営権が創業者に残ったままになるケースです。
その結果、以下のような混乱が生じる恐れが生まれるのですね。
- 2代目社長が出した指示の是非を、社員が創業者に確認しにいく
- 創業者と2代目社長で判断が分かれ、スピーディーな経営ができなくなる
このように会社がいつまでも創業者に依存する環境は望ましくありません。
もちろんはじめから全ての経営権を2代目社長に集中させる必要はありませんが、会社に大規模な損失をもたらす恐れのない判断については、2代目社長の責任で行っていく必要があるでしょう。
そうすることで、2代目社長も会社も成長していくことができます。
社員とビジョンを共有する
2代目社長が経営を成功させるためには、社員とビジョンを共有することが大切です。といいますのも、事業承継後も社員は創業者のビジョンに従って行動している恐れがあるためです。
ここに齟齬があると、会社がスムーズに動けなくなります。
そのため2代目社長はクレドや経営理念を定めて、ビジョンを社員と共有していく必要があるでしょう。
またクレドや経営理念を一方的に定めても効果は薄いので、社員と細かなコミュニケーションをとっていくことも重要です。
いきなり大掛かりなルール変更をしない
このように2代目社長は小さな行為の積み重ねで社員との信頼関係を築くことが重要です。こうした信頼関係がないうちから大胆な改革に着手しても効果は得られません。
2代目社長は事業承継後に意気込んでしまい、本で読んだような大掛かりなルール変更に着手する場合があります。
しかし創業者の築いてきた土壌の残る中で、新米経営者が大きなルール変更に着手しても社員からの反発を招くだけの結果となる場合が多いです。
私も事業承継後は、第1に会社の財務状況を改善しなければならないと感じましたが、そこに着手できたのは入社から5年後でした。社員との信頼関係の構築には年単位の時間が必要になるのです。
2代目社長の成功例3選
ここまで紹介させて頂いたとおり、2代目社長の経営には創業者のものとは別の難しさがあります。
ここでは一つの参考例として、2代目以降の社長が会社を大きく成長させたケースを3つ紹介したいと思います。
いずれも大きな企業の事例なので、そのまま中小企業に当てはめることはできませんが、躍進の裏にあるエッセンスを私と共に学んでいきましょう。
ファーストリテイリング
はじめに紹介させて頂くのは今や世界的企業にもなったファーストリテイリングです。展開する事業である「ユニクロ」の方が名前の知名度はあるかもしれませんね。
今でこそ日本を代表する大企業であるファーストリテイリングですが、前身は山口県で営まれていた小さな紳士服専門店でした。
それを現在の代表取締役である柳井正さんが大きくしていったのです。ユニクロの躍進を語る上で欠かせない視点は以下の2つではないでしょうか。
- ブランディングの上手さ
- 薄利多売
ユニクロの衣服は決して高価なものではありません。しかし一見して安っぽく見えるつくりでもありません。ここに強みがあると思います。
シンプルなデザインを徹底することで、安価ながらも着回し力の高い服を作り続けて「ユニクロ」というブランドを世間に浸透させたのです。
またはじめに話題になったフリース、そして昨今の定番であるウルトラライトダウンなどシーズンごとに話題になる商品を開発している点も同社の強みだと感じます。
ユニクロは戦略的な販売が非常に上手い企業なのです。
このように小さな紳士服専門店を一代で日本を代表する企業に成長させることも決して不可能ではありません。
2代目社長だからこそ、創業者の想いを引継ぎつつも現代社会に即して戦略を模索していきましょう。
ヤマト運輸
ヤマト運輸の2代目社長である故・小倉昌男さんも父親から引き継いだ運送会社を一代で大きくした人物です。
当時、個人が荷物を送るためには郵便窓口に持ち込むしか方法はありませんでした。そのような中、電話1本でドライバーが集荷におもむく宅急便をつくりだして業界を大きく変えたのが小倉昌男さんなのです。
当時は小口荷物は必ずしも儲かるものでないと考えられていましたが、小倉昌男さんは数をこなすことで利益率を高めました。
このように2代目社長として業界に不足しているサービスを開発して、一代で会社を大きくしたのです。
ジャパネットたかた
大手通販事業を営むジャパネットたかたは、カリスマ経営者である創業者の高田明・前社長から2代目社長の高田旭人さんに代替わりしています。
強いカリスマ性を誇った創業者と比べて、高田旭人社長は必ずしも目立つ人物ではありませんが、事業承継後も売上は伸び続けているのです。
従来のジャパネットたかたは先代社長のカリスマ性に引っ張られる形で成長してきましたが、高田旭人社長は一人のカリスマに依存する組織を変えていったのです。
高田旭人社長は「長時間労働は生産性を下げる」との考えのもと、残業時間の管理を徹底し、作業効率を高めるための設備投資に力を入れました。
こうして社員が効率的に仕事のできる環境を整え、心と体に大きな負担をかける残業を極力少なくし、社員一人ひとりが自発的に業務に臨むことのできる会社を作ったのです。
その結果、カリスマ社長に依存していた頃よりも売上を高めることに成功しています。
ジャパネットたかたの例は、これから事業承継を進める中小企業にも大いに参考になるはずです。社長の個性に応じて地道に組織を作り替えていくことで、会社は確かに成長できるのですね。
2代目社長と創業者の違い
2代目社長が会社を成長させた3つの例を紹介させて頂きましたが、あなたの会社の参考になりそうなものはございましたでしょうか?
ファーストリテイリングとヤマト運輸が新しいサービスやブランディングで会社を成長させたのに対して、ジャパネットたかたは業務の効率化と社員の自発性を高めることで会社を成長させています。
しかし、すべての例に共通するのは2代目社長が自社の状況を正確に把握して、それにあわせた改革を行った点ですね。
ここでは2代目社長と創業者の違いを紹介させて頂くので、あなたの会社の状況を正確に把握する参考にしてください。
結果の有無
創業者と2代目経営者には、事業承継の時点において有する結果・実績に大きな違いがあります。
創業者は会社を作って、これまで維持してきたという絶対的な実績を有しているためやはり社員からの信頼を集めやすいのです。
これに対して2代目社長は事業承継の時点ではそれほど大きな結果・実績を有していません。もちろん当然のことなのですが、これによって社員からの信頼を得られないケースが多いのです。
そのため経営権を2代目社長に集中させるためには創業者の協力も必要となります。
またジャパネットたかたのように、創業者のカリスマ性に依存する組織を社員一人ひとりが合理的に考えて行動できる組織に作り替えていく必要がありますね。
自分に合う社員の有無
2代目社長が会社を引き継ぐと、そこにはすでに社員が存在しています。そして極端なことを言うと、それらの社員は創業者が選んだ人物です。
つまり、すでにいる社員が2代目社長に合う人物か否かはわからないのですね。
そのため2代目社長は、既存社員の個性をしっかりと見極めなければなりません。そして、個性をもった既存社員が効率的に働くことのできる環境を整えていく必要があるのです。
このように2代目社長には、ゼロから社員を選ぶことができないという難しさがあります。社員の個性の把握も、会社の現状把握の一環です。
会社資産の大きさ
債務超過の状態の会社を引き継いだ場合は別ですが、2代目が社長となった際は会社に一定の資産がすでにあるケースが多いです。
これに対して創業者は小さな資産規模で会社を始めてきました。つまり、2代目社長の方が経営の自由度の高い中で経営に着手することになるのです。
こうした自由度の高さは、ときに経営の迷いにつながります。またすでにある資産を減らしてはいけないという大きなプレッシャーにもなります。
その結果、不安やリスクを回避することを第1の目的とする経営になってしまい、会社の成長が遅くなるケースがあります。
もちろん事業承継の時点で一定数の社員も存在するので、彼らの生活を守らなければならないというプレッシャーにもつながるでしょう。
あなたももしかしたら、こうしてプレッシャーを感じたことはあるのではないでしょうか?
私も会社を継いだ当初は、社員の生活を守らなければならないプレッシャーを強く感じ、それが精神的に大きな負担となっていました。
しかし顕在化していないリスクや不安にばかり気を摂られていても無駄だと感じ、それらについては顕在化したときに対処していけば良いと開き直ることにしたのです。
その結果、精神的な負担は大きく軽減されました。
まとめ
いかがでしたでしょうか?
今回の記事では、2代目社長の特性について紹介させて頂きました。2代目と創業者は同じ経営者ですが、その立場は大きく異なるのですね。
そのため会社を継いだ際は、現在の自社の状況を正確に把握することが重要となります。
以下に今回の記事のポイントをまとめさせて頂きました。改めて確認してみてください。
- 2代目社長には会社を潰せないというプレッシャー、根拠のない周囲からの反発といった苦労がある
- 2代目社長は自らの責任と決断で経営にあたり、社員の信頼を得られる成果を積み重ねることが大切
- カリスマ経営者から2代目に代替わりした場合は、ジャパネットたかたの成功例が参考になる
- 2代目社長はゼロから会社を作るわけではないので、引き継いだ会社の現状把握が重要
2代目社長として会社を成長させるためには、第1に引き継いだ会社が現在どのような状況かを正確に把握することが重要となります。
その上で、社員の信頼を集めて、会社に合った改革を少しずつ進めることで会社は良くなっていくはずです。