会社を継がないのが当たり前の時代に3代目社長になる|事業承継前夜

創業昭和27年「株式会社サワチカ」、私は3代目

弊社「株式会社サワチカ」は高知県四万十市において、建築資材の販売施工業を営んでいます。創業は昭和27年にさかのぼり、私は父から会社を継ぐかたちで3代目社長となりました。つまり弊社は事業承継を2度行っているのです。

しかし父が継いだ時代と私が継いだ時代では、事業承継に対する認識が大きく異なっていたと感じます。

本人から聞いた話では、父は、母方の祖父の立ち上げた沢近商店を継ぐことを当然と考えていたようですが、私の場合は別で、一度は会社を継がないことを両親に伝えています。

もちろんそこには後ろめたさや葛藤がありました。当時、私は「サラリーマンとして頑張り、家族を養い、親に恩返しをしていく」道筋が正しいと自分に言い聞かせていたのです。

その後ある種の開き直りがあり、最終的に株式会社サワチカを継ぐことを決断しましたが、このような葛藤と不安は現代の後継者の多くが直面するもののように感じます。

つまり「継がない」という選択が当たり前のようにできるようになったからこそ、事業承継に際して大きな悩みが生まれてしまうのです。

子が親の会社を継がないのが当たり前の現代

社会問題としての中小企業の事業承継については、私もよく耳にします。そして、私自身が事業承継を経て経営者になったため、同じ立場の後継者の方の力になりたいとの強い想いも抱いています。

株式会社ニッセイ基礎研究所が行った「働く人の就業実態・就業意識に関する調査(2004年)」では、親の事業を子が承継しない理由について「親の事業に将来性・魅力がないから」が45.8%、「自分には経営していく能力・資質がないから」が36%を占めています。

それに対して「今の仕事・企業等が好きだから」は16.9%です。つまり、今の仕事が好きだから親の会社を継ぎたくないと考える人は決して多くなく、むしろ事業および経営について不安があるがゆえに事業承継に消極的になるケースが多いのです。

この調査結果は私の周辺にある会社についても妥当していると感じます。昨今はそもそも親の方から事業を子に継がせたくないと考えている場合もあるほどです。その理由も、事業および経営に対する不安が最も多いように感じます。このように現代においては、子が親の事業を継ぐことは当たり前ではなくなっているのです。

しかし、父は私に会社を継がせたいと考えていました。第一の理由は、従業員の雇用を維持するために、事業を継続させることです。弊社は従業員数が15名と決して大きな会社ではありませんが、それでも経営者の選択が従業員の今後の人生を大きく変える可能性を持つ点は大きな会社と変わりがありません。

従業員に対する父の責任感には感銘を受けた記憶があります。先ほど会社を子に継がせようと考えない経営者が増えていると述べましたが、その際に大きなジレンマとなるのが従業員の存在です。

そして、後継者候補である子もそのジレンマに巻き込まれていくことになります。現に私が会社を継ぐことを決めた理由の一つは従業員の存在です。会社を継ぐか否か悩む中で、私は以下のようなことを考えました。私が何不自由なく生活することができ、大学まで進ませてもらうことができたのも、ひとえに会社を支えてくれる従業員さんがいたからである、と。

中には私が生まれる前から株式会社サワチカ一筋という大ベテランがおり、彼らは幼い私をよく可愛がってくれました。こうした考えを経て、「私の代で会社を途絶えさせてはいけない。従業員さんに恩返しをしたい」と強く感じ、株式会社サワチカを継ぐことを決意したのです。

従業員と共に汗を流す中で募る焦り

このようにして会社を継ぐことを決断し、まずは一社員として入社しましたが、当時は承継について具体的な考えは持っておらず、まずは社内の現状をしっかりと把握すること、既存の従業員さんに自分を知ってもらうこと、の2つが重要だと考えました。

承継を円滑に進めるための施策こそ頭にありませんでしたが、これから何をしていくにしても私自身が会社から認められない限り上手くいくはずはないと感じたのです。

そこで私が最初にはじめたのは、従業員さんと共に製造業務で汗を流すことです。弊社には30年ないし40年と勤務しているベテランが多く在籍しています。3代目社長として彼らの信頼を得るには、彼らを徹底して理解すべきと考えたのです。

当時はよく従業員さん一人ひとりと食事を共にしました。ブライベートの話から、会社に対する不満まで様々なことを聞かせてもらったことを覚えています。そして、「いい会社にしたいので力を貸してください」と頭を下げました。

このようにして従業員さんとコミュニケーションをとっていたのですが、同時に焦りも募りました。それは、「私が現場業務で汗を流し、従業員さんとコミュニケーションをとっていても、会社の売上は伸びず会社の状況は好転しない。むしろ私の分の人件費がかかるだけだ」というものです。正直なところ、当時の弊社は経営状況が良くなかったため、私が何とかしなければならないという葛藤がありました。

得意な営業を活かして会社に貢献しよう

そこで私は父と相談して3か月目から新規開拓中心の営業に出ることを決めました。しかし当初は営業だけに集中するつもりはなく、3年間は営業と並行して製造業務も行うつもりでした。いくら私が新しい仕事をとってきても、従業員さんとの間に信頼関係がなければ仕事を完了することができないためです。

しかし、ここには嬉しい誤算がありました。弊社には、先代社長の子が会社を継ぐことについて反発心を抱くような人物がいなかったため、次第に「製造業務を離れても彼らなら応援してくれるはずだ」と思えたのです。

また製造業務の技術と経験で私が彼らに勝てるわけはありませんし、勝っても会社の業績が良くなるわけではありません。それよりは自分の営業経験を活かして売上・利益を拡大することで彼らからの信頼を得たいと考えたのです。

やはり売上や利益の数字を伸ばしたり、お客様の数を増やすことは結果を定量的に伝えることにつながるため、従業員さんからの信頼を得るために高い効果を発揮しました。

今になって考えると、会社の状況と、私自身の得意分野、その2つから、会社を継ぐためにすべきことが見えてきたのだと感じます。

このように事業承継において、後継者がはじめに着手すべきことは会社の状況と本人の経験や能力により変わります。そこを見誤ると、会社の成長を止めてしまったり、業績を傾かせてしまったりすることになるのでしょう。

また弊社のような中小企業では「会社=人」という側面が強くなるため、会社の状況を知ることは、すなわち一人ひとりの従業員を理解することだと感じます。

このように私は、親の事業を子が継ぐのが必ずしも当たり前ではない時代に3代目社長となりました。会社を継ごうと思うことができた大きな理由は、父の従業員に対する想いに触れたことです。

そして承継後は従業員からの信頼獲得が第一と考え、私は新しい仕事をとって会社を成長させることでそれを実現したいと考えました。

私が継いだ当時、弊社は業績が芳しくありませんでした。そのため私は会社の財務改善こそ当面の最大の課題と位置付けていたのです。

承継後の財務改善について近日公開予定です。もう少々お待ちください。

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