経営者の皆さんにとって、若手社員とはどんな存在でしょうか。
将来を担う重要な人材という位置づけだと思いますが、その思いとは裏腹に「若手社員のモチベーションの上げ方が分からない」「そもそも若手社員が何を考えているのか分からない」といったお悩みをお持ちの方は多いことと思います。
将来を担う重要な人材だけに早期離職されては困りますし、若手社員だからこそ期待したいこともあるはずです。
そこで当記事では、若手社員のモチベーションを高め、そして維持していく方法について解説したいと思います。
1.若手社員のモチベーションが高まる時7選
若手社員はどんな時にモチベーションを高めているのか、それを知ることから始めましょう。若手社員自らがモチベーションの高まりを感じる場面を7つご紹介します。
1-1.存在意義を実感できる
自分が担当している仕事が会社の経営に貢献している、さらに言えば社会に貢献していることが実感できると、人は自らの存在意義を実感できます。
これは若手社員であっても同じで、特に社会経験が少ない人であれば喜びはより大きなものになります。
また、人には承認欲求があります。他者から認められたい欲求のことを指しますが、それが仕事によって達成されていると健全な形でモチベーションを高めることができます。
1-2.成長を実感できて自信が持てる
存在意義の確認や承認欲求は他者から見た自分のイメージに関するものですが、自分自身が成長を実感できて自信が持てることも、モチベーション向上に貢献します。
成長したい願望が強い若手社員ほど、自信が持てた時にはさらなる上を目指す意欲につながります。
1-3.会社や周囲から信頼されている
これも承認欲求に近いものですが、信頼されるとその信頼を損ねないようにしようとするのが健全な人間心理です。
もちろん現実が伴っていないのに信頼しても意味はありませんが、会社の期待に応えてくれている部分についてはしっかり信頼し、それを本人に伝えることでモチベーションは向上します。
1-4.公平かつ適正に評価されている
最近の若い人に見られる傾向として、評価の適正さに対する意識が挙げられます。
頑張っている人ほど評価には敏感になりやすいので、公平かつ適正に評価されていることが実感できれば、若手社員のモチベーションは高まります。
1-4.目指すべきお手本がいる
若手社員には、経験やキャリアがありません。
自分が持っていないものを持っている人、しかもそのことによって信頼され、尊敬されているお手本がいることは刺激になるので、「自分もああなりたい」というモチベーションにつながります。
1-5.目指す価値のある目標がある
お手本となるような人の存在も含めて、目指す価値を認めることができる目標があるのは、成長意欲やモチベーションに直結します。
具体的な数値の目標でも良いですし、何か身につけたいスキルでも良いでしょう。大切なのは目指す価値を感じられるほど、分かりやすい目標であることです。
1-6.自主性が尊重されている
最近の若い人に見られる特徴に、自主性を大切にする傾向が挙げられます。
個人の考え方や主張が尊重される教育環境で育った人も多いため、同調圧力や意味のない上下関係などを押し付けられることによってモチベーションが低下することは多々あります。
その反面、自主性が重んじられていることを実感できると会社への信頼度が高くなり、モチベーションも向上します。
1-7.成功体験、達成感
仕事をするのは給料をもらうためと割り切っている人は意外に少なく、せっかく仕事をするのだから成功したい、何かを達成したいという思いを持っている人は多いものです。
特に若手社員の場合はまだ社会人としての成功体験や達成感を実感する機会が少ないので、小さなことであっても成功体験や達成感をしっかりと感じられることはモチベーションと深く関わっています。
2.若手社員のモチベーション低下による悪影響
若手社員のモチベーションが低下してしまうと、どんな弊害があるのでしょうか。ここでは若手社員のモチベーションを維持できなかった場合に起きることを解説します。
2-1.若手社員の離職実態
社会全体を見て、若手社員の離職事情がどうなっているのかを見てみましょう。
厚生労働省が発表している「新規学卒就職者の離職状況」によると、平成28年3月に学校を卒業した人の3年以内離職率が大卒で32%、高卒で39.2% にも及びます。実に3割以上の人が新社会人になってから3年以内に離職をしていることが分かります。
若手社員を10人採用しても、データ上ではそのうちの3人以上が3年以内に辞めてしまうことになります。
これだけの人が早期離職をしていると、やはり会社にも何らかの悪影響が及んでしまうことは間違いないでしょう。
2-2.採用コストが水の泡になってしまう
直接的な悪影響として考えられるのは、採用コストです。採用には相応のコストがかかりますが、早期離職をされてしまうとそのコストが水の泡になってしまいます。
もちろん金銭的なコストだけでなく、採用活動には人的コストも伴います。それが水の泡になってしまうのは、特に中小企業では看過できない問題です。
2-3.悪しき前例が社風にも及んでしまう
若手社員には若さゆえの元気さや、周囲の雰囲気を変えるような力があります。そんな力を持った人が早期離職してしまうことが続くと、社内には「うちの会社は新入社員が続かない」というムードができてしまう恐れがあります。
年配社員が「最近の若者は…」というイメージを持ってしまうと、それが若手社員に伝わってしまい、負の連鎖になってしまうかもしれません。
2-4.採用活動の弊害になる
若手社員のモチベーションを維持できず早期離職になってしまうと、以後の採用活動に対する悪影響も考えられます。
若い人はネットを駆使しているので、良い辞め方でなかった場合はネットの口コミサイトなどにネガティブな書き込みをされてしまうと応募しようとする人の目に触れてしまう恐れもあります。
若い人の多くはワークライフバランスを重視する傾向があるため、「ブラック企業ではないか」という印象を持ってしまうと、それは採用活動に大きなマイナスです。
3.若手社員のモチベーションを高める会社づくりのアドバイス
若手社員のモチベーションを向上、維持し、長く働ける会社づくりをするためのアドバイスを、5つのポイントにまとめました。
3-1.「聞く」と「知る」を大切にする
「仕事のやり方は先輩から盗め」「背中を見て覚えろ」という人材育成は、今や完全に過去のものです。このような言葉自体も死語といって良いでしょう。
若い人たちの多くはコミュニケーションを重視しているので、会社や経営者から積極的に対話の機会を設け、「聞く」ことと「知る」ことを大切にすることをおすすめします。
先ほど承認欲求がモチベーションを高めると述べたように、そういった機会を通じて承認欲求を満たすことも重要です。
3-2.若手社員を尊重した人事異動
社内にはさまざまな職種があります。営業マンとして採用した人を営業マンとしてだけ育成するのではなく、本人の意思を尊重しながらさまざまな職種を経験してもらうのもモチベーションを維持する効果があります。
中途採用であれば即戦力であることを期待しますが、新卒採用など社会人経験が少ない人を採用した場合は、あらゆる可能性を試してもらうことが本人のキャリアアップにもなるでしょう。
3-3.お手本の活用
先ほどお手本となる人の存在が重要であると述べたように、社内のお手本となるような人を活用するのはモチベーション向上に有効です。経営者本人がお手本になるのが理想的ですが、社内のエース的な社員であっても効果は同じです。
こうしたお手本となる人を会社がしっかりと評価すると、元から高いモチベーションを持っている若手社員であれば「自分もああなりたい」と思えるものです。
3-4.前例や伝統を押し付けない
年配の社員などがどうしてもやってしまいがちなのが、過去の成功体験や伝統を若手社員にも押し付けてしまうことです。それが良くないことは分かっているものの、ついつい口から出てしまうこともあるでしょう。
ここで重要になるのが、コミュニケーションです。どう成長したいのか、どんなキャリアを描いているのかといった「思い」をしっかりと聞き取り、それに寄り添う姿勢が若手社員の心に届きます。
3-5.納得できるロジックを提示する
これも若い人に見られる特徴として、業務に対する理由を求める傾向が挙げられます。「なぜこの仕事が必要なのか」「この仕事をすることで何が得られるのか」といった納得できるロジックを提示することで、若い人はそのための方法を自分で考えるようになります。
何のためにやっているのか分からない仕事に対してモチベーションを高めろと言われても、若い人には難しいのではないでしょうか。
4.まとめ
若手社員がモチベーションを高めるのはどんな時か?それをいかして早期離職を防ぐにはどうすれば良いのか?といった疑問にお答えするべく、必要な情報を網羅しました。
若い社員は将来を担う会社の財産であり、せっかく縁あって採用した人が早期離職をしてしまうのは会社だけでなく本人とっても不幸なことです。
今の若い人たちの思考回路を理解した上で、モチベーションを高めるために手を差し伸べてあげてください。